いまのまま

成功より、今日楽しいかどうか。

深夜の大阪ドライブ慕情。

芸人をしていた頃の事。

東京に引っ越しをする直前、地元大阪で向こうでの引っ越し費用を貯めるために

週に何回か深夜バイトをしていた。

当時は3人組で活動をしていて、みんな同じように深夜に働き貯金をしていた。

体はしんどかったけど、その方が時給も良く、仕事も楽だった。

そのせいで当時は深夜型の生活になっていたので、

休日はだいたい夕方に起きて、夜に遊びに行っていた。

当時は芸人をやっていたけれど、上京の為にとある事務所を辞めて貯金に専念していたので、

舞台には出ないで、深夜に大阪の街をあてもドライブするのに明け暮れていた。

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夜の大阪。

当時は同じような上京予定の友達が数人いたので、みんなでよく

だらだら大阪の街を本当にあてもなくドライブしていた。

当時全盛期のEDMを聴きながら。

都市伝説を語り合いながら。

 

ボクの地元堺市にはスーパー銭湯が多いので、

今日はあそこ、次はあそこといった感じで週に何回も夜のスーパー銭湯に通っていた。

そしたらお腹も空いてくるし、朝まで時間もあるしで

牛丼の大盛りを食べに行ったり。

贅沢したい時は、堺港だっけな。夜12時ぐらいからやっている

天ぷらを食べに行った。

いつ行っても行列で、いつ行っても30分ぐらい並ぶ。

 

深夜の空腹とあの時間何食べても美味しく感じる現象で

並んで待ち侘びたのもあって、とんでもなく美味しかった。

たくあんののった大盛りご飯に、熱々のあさり汁。

最初は決まって鱚、チーズの天ぷらという順番で、、白子、牡蠣とフィナーレを

迎えていく。

満腹感と湯冷めによる眠気が、ふわふわした気分を作り上げる。

だけど、朝までまだまだ時間はある。

今解散しては中途半端だと思っていたのか、

北の方へドライブして山を登り、夜景を見に行ったり。。

関空の方へ行ったり。。

そして大きい駐車場のコンビニに車を止めてプラプラ散歩。

同じように大きなトラックが何台も止まっている。

上京する未来なんて本当に来るんだろうかという感覚がすごく好きだったし、

ワクワクを担保にだらだらできるこの時間もずっと続いてもいいなと思うこともあった。

 

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当時車でCAPSULEばっかり流していた。

当時はもっと友達との話題は“未来“に向けられていた。

「売れたら。」「有名になったら。」「東京では。」

夢いっぱいだった。と同時にもし売れてしまうと、そんな話ができなくなったり、

もうワクワクを担保に0を楽しめないとも本能で思ったり。

 

ある日関空の中をドライブした帰り。

ちょうど朝になりかけていて、関空から内陸地への長ーい橋を車で走っていた。

いつもボクが運転しながら音楽をかけてたけれど、

その時はたまたま何も流さず、ただ走っていたし

みんな景色を見ながら半分ぐらい頭は眠っていたかもしれない。

 

その時誰かが、スマホ

WOW  WAR  TONIGHTを流した。

その瞬間身体中が感動に包まれた。

とんでもなく綺麗な夜明けと、未来に向かってる友達との時間が曲とハマりすぎていて、

曲が今の自分達を唄っているような気分になった。

当時その曲をよく知らなかったけど、みんなリズムに乗っていた。

同じような事をみんなも考えていたかもしれない。

謎にちょっと泣きそうになった。

この曲がとても好きになった。

今でも聴くとその時を鮮明に思い出す。

あの日の帰りは特別だった。

 

ドライブでみんなを家に送り届け終わり、

1人家に向かうといつもすごい充実感があった。

何もしてないのにすごく幸せな気分になった。

その気分はお風呂に入って、カーテンからの朝日を強力遮りながら眠りに

つくまでずっと続いた。

 

今やみんな忙しくなった。

あんな時間が余ってしょうがないような遊びは、

もうなかなかできないだろうけど、

ボクはあれこそが豊かなんじゃないかと

それから何回も思い出した。

 

友達はテレビで見れるようになり、

就職したり、それぞれみんな自分の人生を生きている。

「やったな。言ってた通りやな」とボクは思う。

と同時にあんなに一緒に無駄な時間を過ごす事は

もうできないかもしれないなぁととても寂しくも思う。

 

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たまに過去を振り返る朝。

あの夜の駐車場で感じた気分を

まだ自分が大切にしつつ

こんなんでいいのかと考えつつ。

忘れたくないな。

また絶対やりたいな。と

よく思うことがある。